文:兼田達矢

「ChageLiveTour10-11“まわせ大きな地球儀”」は、同名ツアーのファイナル・ステージを収録した、まさにリアルなライブ映像作品である。Chage率いるバンド「チャゲトルズ」の、多彩なサウンド・ワークと息の合ったステージ・パフォーマンスの魅力をとらえて余すところがない。開演と同時に一気に高まる会場の熱気に呼応してChageのサングラスがたちまち曇る様子も、アンコールで会場中が盛り上がった地球模様のバルーンが片付かなくてスタッフが焦る一部始終も収めた、文字通りの“完全収録作品”なのだ。

が、それなのに、どこか怪しい。どうしてなんだろう?

その理由は、Chage自身が笑いながら解き明かしてくれた。
「ライブ自体は本物なんだけど、やってることはすごくバーチャルな世界ですからねえ。“MCは全部英語だよ”って、日本語で言ってるし(笑)。“リバプールから来ました”とかわけのわかんないことを言ってるのに、お客さんもそれを楽しんでくれてる。“○○ごっこ”って昔よくやったけど、やってることはそれと変わらないんです。その“○○ごっこ”の集大成というか」

年季の入ったプロフェッショナルたちによる本気の“ごっこ”。ある意味ではすごくねじれたそのパッションの有り様は、アルバム『&C』およびこのツアーを貫く“ブリティッシュ・ロック”というキーワードの核心と通底している。それゆえに、この映像のなかのチャゲトルズはそこはかとないユーモアを漂わせながら、なにやら怪しく、そしてかっこいい。

ただ、忘れてはいけないのは、チャゲトルズの出現と活躍は、“Chageの細道”というアコースティック・ツアーとの対照において在るということ。“Chageの細道”がシンプルに歌の温もりとキャラクターの魅力を伝えることに向かっているのに対して、思いきり妄想を膨らませてイメージしたカラフルで重厚なサウンドを実現するのがチャゲトルズのライブだ。そして、印象的なコントラストを成すその2つのプロジェクトは、“Chageとは一体どういうアーティストなのか?”というひとつの問いの答えにたどり着くために用意された、北回り航路と南回り航路のようなもの。だから、「ChageLiveTour10-11“まわせ大きな地球儀”」とは、“チャゲトルズ・コース”に搭乗した人たちの最初の“旅”の記録であるわけだが、それは同時に“チャゲトルズ再来日”という次なる“旅”へのパスポートでもあるだろう。最初の“旅”には行けなかったとしても、このパスポートがあれば次の“旅”はたっぷりと楽しめるはずだ。

それからもうひとつ、副音声をチェックすることも忘れてはいけない。Chageがパーソナリティを務めるラジオ番組「音道」に登場する、これまた怪しいキャラクター“音道くん”が全編にわたって楽しい解説を加えている。ちなみに、これも一発録音。あくまで“ライブ”にこだわるChageならではの形で、彼の様々な要素を立体的にパッケージした、まさにファン必携のアイテムである。